「この情報、絶対に儲かるらしいよ。まだ公開されてない未公開会社の内部情報です。」
投資家の知り合いからそう囁かれたら、あなたはどうしますか?一瞬、心が揺らいだとしても、どうか冷静になってください。それは、甘い蜜の裏に潜む危険な罠、インサイダー取引かもしれないのです。
インサイダー取引とは?
インサイダー取引とは、会社の内部上情報を知る上場会社の関係者などが、一般には公開されていない重要な内部情報(未公表の重要事実)を知りながら、その情報が公表される前にその会社の株などを売買する行為を指します。
ここでいう「重要な内部情報」とは、例えば以下のようなものです。
- 業績に関する情報: 業績予想の大幅な上方修正や下方修正、黒字転換、赤字転落など
- 経営に関する情報: 新しい事業の開始、提携、合併・買収(M&A)など
- 災害に関する情報: 事業活動に大きな影響を与えるような災害の発生など
これらの情報は、株価に大きな影響を与える可能性があり、一般の投資家が知らないうちに特定の人が有利に取引を行うことは、市場の公正性を著しく損なう行為とされています。
なぜインサイダー取引は「儲かる」可能性があるのか?
未公表の好材料を知っていれば、株価が上昇する前に安く買い集めることができます。逆に、悪材料を知っていれば、株価が下落する前に高く売り抜けることができるため、理論上「儲かる」可能性が高いと言えます。
例えば、会社の従業員が、勤めている会社が上場企業の競合他社Aと合併することを知り、会見をする前にA社の株を購入した場合です。
こういった内部情報は、一般投資家が知りえない情報で買い付けしたためインサイダー取引になります。
インサイダー取引と聞くと不正に儲けたイメージがありますが、損しても、それは不正な手段によるものであり、違反となり刑罰の対象となります。
甘い誘いの裏に潜む「損」と「罰」
インサイダー取引に手を染めてしまうと、一時的に「儲かる」かもしれませんが、最終的には計り知れない代償を払うことになります。
まず、経済的な損失です。インサイダー取引は証券取引等監視委員会(SESC)によって厳しく監視されており、発覚した場合、課徴金の納付を命じられることがあります。この課徴金は、不正に得た利益を大きく上回ることも珍しくありません。
さらに、社会的な信用を失うという大きな代償も伴います。逮捕や起訴に至れば、懲役刑や罰金刑が科される可能性があり、その後の社会生活は大きく制限されます。社会からの信頼も失墜し、精神的な苦痛も計り知れません。
また、「儲かる」と情報を伝えた人・取引を推奨した人も、状況によっては共犯として責任を問われる可能性があります。安易な誘いに乗ることも、軽い気持ちで他人に情報を漏らすことも、決してしてはいけない行為です。
知らなかったでは済まされない
「知らなかった」「軽い気持ちだった」では済まされません。インサイダー取引は、金融商品取引法という法律で明確に禁止されている犯罪行為です。
私たち一人ひとりが、市場の公正性を守る意識を持つことが大切です。もし、不確かな情報や甘い誘いを受けた場合は、すぐに専門家や信頼できる機関に相談しましょう。
冷静な判断と健全な投資姿勢こそが、長期的な資産形成の鍵となるのです。安易な誘惑に負けず、正しい知識と判断力で、賢いマネーライフを送りましょう。